コピー機 レンタルが一目瞭然
創業時は、他のベンチャー企業と同様に、経営トップである僕がすべてを引っ張っていました。
そうやって一九九九年に上場し、ネットバブルの二000年から二OO一年にかけては売上高九十億円、経常利益十二億円を達成するまでになっていたんです。
ネットブームの中でこれからも成長が続くと判断し、それまで三百坪のオフィスを一フロア借りていたのを、三フロア約千二百坪にまで増やしたりしました。
ところがネットバブルが崩壊し、インターネットビジネスが急減速してしまう状況になりました。
GMOもそのあおりを食らい、経常利益を二十億円にまで増やす予定だったのが、二億円にまで減少してしまい、そして最終利益は初めてマイナスになってしまったんです。
たいへんな会社の危機でした。
その危機を乗り越えるために、どうされたのでしょうか。
インターネットの世界はスピードも速く、すでに会社の全体を僕だけでは見切れない状態にまでなってしまっていた。
そこで頭を切り換えて、経営メンバーにすべての権限を委譲することで事態を打開しようと考えました。
勝算はあったのですか。
そんなものはありません(笑)。
しかしやらなければ、倒れるしかないと考えていました。
それまでのGMOでは、みんな自分の担当事業がマイナスになっても、最終的には社長が責任を取ってくれると考えていました。
社長に依存していたんですね。
その気持ちを切り替えて、とにかく信賞必罰であるということを全員の意識に植え付けなければならないと考えました。
具体的にはどのような戦術を採られたのですか。
人事制度を一新して、立候補制と目標管理制度、三六O度多面評価という三本の柱を導入しました。
それぞれについて説明していただけますか。
まず立候補制。
日本の企業は従来、「こいつに新規事業をやらせよう」と経営トップが判断して、人材をピックアップする方法が採られてきました。
しかしそうした戦後の高度経済成長期に行われていた人事制度と、少子化で人口減少期になっている時代の人事制度は、異なってしかるべきだと思います。
だから僕はピックアップ方式ではなく、「やりたい」と手を挙げた社員を競わせてやらせるという立候補制に切り替えました。
目標管理制度というのは。
自分が宣言してやると言ったことをできなければ、上には上がれない制度を作ったんです。
信賞必罰で、成果に基づいた人事異動を徹底したわけです。
そして、それを三六O度多面評価が支えるわけですね。
そうです。
同僚や上司、部下などまわりのスタッフ全員が「あの人がいい」と評価した人間でなければ、上には上げないという手法ですね。
この三つの制度を導入し、会社はどう変わったのでしょうか。
これらの制度を導入した結果、信賞必罰のル−ルが確立され、創業メンバーであっても成果が出せなければ役員から脱落してしまうという状況になりました。
GMOグループは社員が二千人いて、旧来型の日本企業と同じように下から出世していって、頂点がボ−ド(役員会)というシステムになっています。
希望の星がボ−ドなのですが、ボードさえも信賞必罰で成果がガラス張りになったとたん、全部入れ替わってしまったんです。
そしてその新しい人事システムががーつと機能し始めて、やる気のある若者がいっぱいわが社にやってくるようになりました。
たとえばわが社のナンバー2である常務取締役のMは監査法人のKPMGから転職してアルバイトとしてGMOに入ってきて、社員、役員と最短距離でボ−ドメンバーに上り詰めました。
そうしたことが可能になったのは、三つの人事制度がうまく機能しているからだと思います。
それによってネットバブル後の踊り場を乗り越えることができたわけですね。
そうですね。
僕がほおっとしているうちにみんなが頑張ってくれて(笑)、それで前期は売上高二百三十五億円、経常利益二十八億円を上げられるまでになりました。
優秀な人材を取り込めるかどうかが、成長の力ギに怠るというととですね。
インターネット企業で最も大事なのは、人なんです。
ネット産業は新しい市場で、僕らの世代が最先端だった。
上の世代の経験者はいないんです。
だから人材は本当に大事にしなければならない。
せっかく採用した人材が、どんどん出て行ってしまうようなシステムだと、いい人は採れなくなってしまう。
だから優秀な人を育てて、そうした人たちがやりがいを持って仕事をできる仕組みを作らなければいけないんです。
そして実際、そうした活力のある組織を作っていれば、外部からは魅力に見えるようです。
ニッポン放送買収で話題のRもそうですが、うちにも優秀な人材がたくさん来てくれていて、たとえば公認会計士が五人もいます。
会計事務所を作れるほどですね。
従業員数二千人の規模のベンチャー企業で、公認会計士が五人もいる会社はあまりないと思います。
活力のある組織が、そういう人たちを吸い寄せているんですね。
||社長と経営メンバーの役割分担はどうなっていますか。
熊省項羽と劉邦のようなもので、僕は項羽のような大将にはなれないから、劉邦のように周りに優秀な人材をたくさん集めるしかないんです。
僕自身は社長としてピジヨナリ−に徹しています。
会社の将来像を考え、何のためにビジネスをやっているのかというフィロソフィーを作り上げ、会社の思想や方向性を決める。
それに基づいた方針を役員会で説明したり、各事業の数字を報告してもらったりするのが仕事ですね。
現場にはほとんど行かないし、行ったことのない子会社だつである。
みんなの前にもあまり姿を現さないですし。
まあその割にはなんだか忙しいですけどね。
みんなが会社の代表である僕の方だけを見てましたね。
「代表が良ければ」「代表の言うとおり」「代表が言ったから」ということで、ことごとくに僕の方をみんなが見ていました。
でもそういう状況は良くないと思ったので、権限委譲をしたわけです。
「おれはおまえたちの最終的な責任は取る。
そのかわりにおまえたちは責任を割り算して、各担当の事業部できちんとやってくれ。
俺の判断は仰がずに、思う存分暴れてくれ」と伝えたんです。
どんどん突っ定らせると。
そうです。
「調子に乗らせる人事制度」というべきでしょうか。
昔はサラリーマンを指して「出る杭は打たれる」なんて言いましたが、いまはそんな文化はなくなって、「調子に乗ってる奴は、もっと調子に乗せた方がいい」というふうに変わってきていると思います。
その手法が、わが社の人事制度のポイントにもなっていますね。
そういうやり方じゃなければ、スピードの速いインターネット業界では勝ち残っていけません。
経営メンバーもすいぶん若返ったのではないですか。
東証上場企業三千数百社の中で、GMOのボ−ドは五番目に平均年齢が低いんです。
これは新興市場の東証マザ−ズも含めての数字ですから、一部二部だけで見れば、たぶんいちばん若いと思います。
役員会の平均年齢は三十三歳ぐらいで、最も若い役員は三十歳ですね。
しかも役員は一年任期で、信賞必罰で上下するから、メンバーはすぐに入れ替わります。
大企業で三十歳だと、まだ役無しがほとんどでしょうね。
インターネットはスピードも速いし、ガンガン行かなければいけないですね。
Mさんは一九七一年生まれで、まだ三十歳代前半である。
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